⭐ Kilonova Seekers currently on a 2 month maintenance break - thanks for all your efforts during the LVK O4 observing run. We will return on 2nd February 2026! [read more].
重力波(GWs)は時空間の構造のさざ波であり、私たちの宇宙で最も高エネルギーな現象で生じます。アルバート・アインシュタインは1916年に発表した一般相対性理論で、巨大な加速物体が生じさせる重力波の存在を予言しました。しかしその予言から1世紀かかって、2015年にようやく最初の重力波の検出が実現しました。
GW150914と呼ばれる最初の検出は、地球から13億光年先にある、それぞれ太陽の30倍ほどの質量の2個のブラックホールが衝突合体して生じました。以降90件ほどの重力波信号が検出されており、すべてがブラックホールや中性子星の衝突合体で生じたもので、世界中の重力波検出器のネットワークが検出しています。
重力波検出器は巨大な干渉計であり、ほぼすべての方角からやってくる重力波に対するアンテナとして機能します。現在世界中に4つの干渉計 - 4kmの長さのアームを持つ2つのLIGO検出器(1つはアメリカ・ワシントン州ハンフォード、1つはルイジアナ州リビングストン)、3kmの長さのアームを持つイタリア・ピサ近郊のVirgo検出器と日本の岐阜県飛騨市神岡鉱山跡のKAGRA検出器 - からなるネットワークがあります。重力波が地球に到達する頃には、その振幅はごくわずかな量になっているので検出は非常に困難です。
さらに難しいのは、重力波の発生源となった天体を重力波と電磁波(EM)波長の両方で観測することです。これは マルチメッセンジャー天文学 と呼ばれます。ブラックホールの衝突は電磁波では暗いですが、たとえばこの衝突がブラックホール周囲の降着円盤(大質量な中心天体を回るガスなどからなる円盤)の中で起こると、電磁波でも明るく輝く可能性があるはずです。
少なくとも1個以上の中性子星を含む連星系で衝突が起こっても電磁波の信号が期待され、これはガンマ線バーストや、近赤外・可視光波長ではキロノバとして知られています。これまでのところ電磁波でも対応天体が発見された重力波信号はGW1708171例のみです。このマルチメッセンジャー観測のたった1例のみから、中性子星合体の性質や、一部の重金属元素の起源など、多くの知見が得られ、宇宙の膨張率を測定する新しい方法も見つかりました。
地球規模の重力波ネットワーク観測の第4期は2023年5月24日に始まり、2025年1月まで続く予定です。重力波は数日に一度の頻度で検出が期待されています。検出があると一般向けにアラートが発せられ、すぐにGOTOなどの望遠鏡が、光学的に対応する天体を一斉に探し始めます!
重力波光学突発天体観測所 (Gravitational-wave Optical Transient Observer :GOTO)は広視野光学望遠鏡アレイで構成され、重力波源の電磁波対応天体をフォローアップすることに最適化して設計されています。
GOTOの設計上の特徴で重要なのはその拡張性であり、コストを最小限に抑えて再現性を高めるため、市販の既製品からなる装置を使ってデザインされています。また、アラートトリガーへの反応が早く、空のカバー範囲と観測の深さのバランスが保たれるように観測しています。GOTOは現在、北大西洋カナリア諸島ラ・パルマ島のロケデロスムチャーチョス天文台にあるGOTO-Northと、オーストラリアのサイディングスプリング天文台にあるGOTO-Southの2施設を擁し、それぞれの施設に広視野の口径40cmのユニット望遠鏡を8台並架したシステムを2基ずつ(つまり全体で32台!)所有し同時に機能させています。ラ・パルマとサイディングスプリングは地球上で反対側に位置するので、常時観測が可能です。つまり、一方の観測所が夜明けを迎え閉まるころに、もう一方の観測所で日が沈み観測が始まります。こうした位置条件と観測フレームによって、GOTOシステムは空全体を2~3日でサーベイできます。
ラ・パルマのGOTOドームの拡大。2021年9月10日撮影で、プロトタイプの装置が写っている。(c) Krzysztof Ulaczyk 2021
GOTOの主な目的はLIGO,Virgo,KAGRAからの重力波源の初期位置特定を目指した迅速な対応システムです。GOTOシステムが重力波イベントのアラートを受け取ってから、30秒以内には全ての望遠鏡を予想方角に向け、予想される電磁波対応天体を見つけるためにその空域をスキャンするように観測し始めます。
GOTOの設計についてのさらなる詳細はこちらの論文を参照してください。
この即時対応モードとは別に、普段GOTOは数日かけて全天を観測するサーベイモードで観測しています。そのため、超新星や変光星、活動銀河核やその他多種の天体の出現など、空全体の変化を監視する時間領域天文学・突発天体の研究に理想的なツールとなります!
撮影された画像は即座に処理され、すぐに専用のGOTO Marshallにアップロードされ研究チームによって目視確認されます。それと同時に候補天体はこの市民科学プロジェクトのためにZooniverseプラットフォームに送られ、このプロジェクトで同じ確認をほぼリアルタイムで行うことができます。私たちチームでは全てを完全に確認することよりも確認のスピード性を優先し、候補天体の少ししか確認できません。そのため見逃される可能性のある興味深い突発天体の発見のために皆さんの助けが必要です。。詳細は「あなたの助けが必要です!」を参照してください。
夜空は不変ではなく、私たちが観測する空は時間ごと、日ごと、週ごと、月ごとのタイムスケールで常に変化しています。GOTOでは特に以下の天体を発見することに興味を持っています。
GOTOチームが見て確認できる候補天体の数に対してデータ量ははるかに膨大で、機械学習分類器が前もって特に興味深いとして絞り込んだごく少数の候補しか調べることができません。この分類器のパフォーマンスが最大になるよう長時間かけて改良しましたが、それでも間違いは起こっています。そして私たちが最も興味深いのは、分類器が非常に判断に迷っているような天体候補で、それらは奇妙な天体である可能性があるので科学的に関心が高いです!皆さんの目の力を借りて、こうした私たちではカバーできない不確実な候補を調べることで、見逃されていたはずの突発天体を発見できます。皆さんの協力があればこうした新しい突発天体を迅速に発見できるので、フォローアップ観測を通じて、一緒に何を発見したかを知ることができます。
GOTO-NorthとGOTO-Southは晴れている夜は毎晩サーベイ観測を続け、何千もの画像を生み出しています。観測所が稼働しているとき(天気が良いとき)は15分ごとに、過去24時間のGOTO観測から新しい候補画像をアップロードし、皆さんに分類してもらえるようにしています。(分類画像が全て見終わったときはLoading classificationと表示されます)これらのほとんどは、これまで人間の目では見えなかったものです。あなたは遠方宇宙の爆発を、データが撮影されたわずか数時間後に最初に発見できるかもしれません。また、人間が突発天体現象をどれくらいうまく分類できるかを理解し、時間領域天文学における最大級のラベル付けデータセットの1つを構築することに大きく貢献できます。
GOTOのデータストリームの中で、皆さんがどのような隠された宝石を掘り当てるか楽しみにしています!