完了しています!このプロジェクトでは現在既に全てのデータが分類されました。

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研究

なぜ科学者たちはあなたを必要としているのでしょうか


本プロジェクトではみなさんに、全天超新星自動サーベイ(All-Sky Automated Survey for SuperNovae :ASAS-SN)で得られた 光度曲線 を見ていただきます。ASAS-SNはプロジェクト開始時点で 空全体を毎晩監視する能力を持った唯一のサーベイ です。このプロジェクトの運用中に得られた画像データは 1 ペタバイト に迫っています。

ASAS-SNは現在夜空全体を可視光波長領域で監視しています。観測結果を科学的に有用なものにするため、フィルターを使って集める光子の波長を制限しています。このフィルターは特定の波長帯の光のみを透過します。ASAS-SNは現在スローン gバンドフィルターという青緑色に相当する、有効中心波長480nmでFWHMが141nmのフィルターを使っています。以前はジョンソン Vバンドフィルターという緑色に相当する、有効中心波長551nmでFWHMが88nmのフィルターを使っていました。

光度曲線は何年にもわたるその恒星の明るさの観測記録です。
光度曲線は、恒星の明るさが時間経過とともにどう変化するか(もしくはしないか)を知るために用います。

ほとんどの恒星の明るさは一定ですが、一部はその明るさが変化し、それらが 変光星 です。

ASAS-SNの光度曲線から、明るさが時間変化する変光星を発見し特徴づけることができます。機械学習技術を用いてこれまでアーカイブデータのVバンドの光度曲線を6000万個の恒星について解析し、天の川銀河で22万個近くの新しい変光星を発見し、合計60万個近くの変光星をカタログ化しました。

しかしその後、望遠鏡ネットワークを改修し、現在は新しいgバンドのASAS-SNデータで 約1億個の天の川銀河の恒星 を監視しています。アーカイブのVバンドデータと比べると、この新しいデータセットからはさらに新しい変光星の発見と特徴づけが可能となります。

gバンドデータでは初期のVバンドデータからいくつかの改良を行っています。現在gバンドではより暗い天体まで観測でき、さらにVバンドでは2,3日に1回だった1つの天体についての観測頻度がgバンドでは平均20時間以下になり、これまでよりも多くの変光星を発見し詳細に研究できるようになりました。

本プロジェクトでは新しくgバンドデータから変光星候補を抽出したので、みなさんに光度曲線を分類していただきたいです!

これまでに150種類以上の変光星の種類が知られていますが、すべての変光星がそれらのカテゴリーのどれかにぴったり合致するわけではありません。機械学習は古典的に知られた変光星の発見では力を発揮しますが、人による解析なしでは、異常な変光星は自動プロセスだけでは簡単に見逃されてしまいます。

天の川銀河で最も奇妙な変光星の発見を手伝ってください!

私たちは超新星を捜索する傍らで、異常な変光星の何度も発見してきました。私たちの観測による長いベースライン(5年から7年)は奇妙な変光星の発見にとって理想的です。

以下で示すASAS-SNの光度曲線は、発見者でASAS-SNのチームメンバーの名前にちなんで「Zachy's star」と呼ばれている奇妙な変光星です。この星は、Zooniverseの市民科学プロジェクトPlanet Hunterで最初に発見されたことで有名な"Tabby's star"とも比較され、現在も精力的に追跡が行われています。

また、光度曲線を通じて本プロジェクトリーダーのTharindu Jayasingheはこれまで知られた中で最も激しいハートビート星を発見しました。以下の光度曲線がその天体ですが、私たちの機械学習分類ではこの天体をただの食連星だと誤認しており、人の目で見ていなければこの驚くべき発見は見過ごされていたでしょう!

変光星は珍しい天体ですが、Zachy's starのような奇妙な変光星はなおさらです。私たちのデータを調べていけば、あなたも天の川銀河で最も奇妙な変光星の発見に役立てるかもしれません!私たちは皆さんの分類を、これらの天体の真の姿を解明するための追跡研究に使用します。あなたも今までに見たことのないような何かの発見者になれるかもしれません!


変光星


変光星の観測の歴史は長いです。3000年以上前の古代エジプトで食連星のアルゴルの変光は記録されていたとする学説も提唱されています。最近ではオーストラリアのアボリジニーも長年にわたり赤色巨星の変光を観測しており、その発見を自分たちの文化や伝承に反映させていたとする学説も主張されています。ほかにも多くの古代文明で明るい星の変光に気づかれていたものの、現代まで記録が残っていなかっただけの可能性があります。
近現代での最初の周期変光星の発見は、1638年にヨハネス・ホルヴァルダによってくじら座オミクロン星(みら)が周期的に変光することが見つかった例です。
それ以降発見された変光星は徐々に増え、1786年時点では12個、1890年時点では175個、1912年では4000個近く、1983年では28450個近くになりました。そして現代のASAS-SNのような広視野サーベイは、この20年間で100万個以上の新しい変光星を発見しています。

恒星の変光の原因は様々ですが、大きく分けて内的要因と外的要因によって起こるものに二分されます。

  1. 内的な変光星: 恒星自体の物理特性の変化によるもので、こと座RR型やセファイドのような脈動変光星などが当てはまります。
  2. 外的な変光星: その恒星外部の要因によって明るさが変化するもので、食連星がその代表例です。

以下の変光星ツリーはGaiaコラボレーションの Eyer, L., Rimoldini, L., et al. 2019, Astronomy and Astrophysics, 623, A110によるもので、変光天体の多様さを強調しています。

この変光星ツリーは以下のような変光星の光度曲線に現れます。

変光星の光度曲線は、変光星の種別によって独自の形や特徴を持ちます。
こうした特徴によって、光度曲線を見るだけで変光星の種別を大まかに分けることができます。

一般的な周期変光星の種類のいくつかを、ASAS-SN変光星アトラスページにまとめました。ここでは音声バージョンを含む、変光星の位相光度曲線を参照できます!

今日までに、私たちは機械学習分類を用いて6000万個以上の天の川銀河の恒星のVバンド光度曲線を特徴づけしました。この過程で私たちは新しい変光星を22万個以上発見し、これはASAS-SNによるこの明るさの範囲のこうした天体についてのコンセンサスを大幅に改善させるものです。

以下に、変光星の種別で色分けした、ASAS-SNが発見した変光星の全天分布図 を紹介します。ASAS-SNはまさに全天サーベイと呼べるでしょう。

全天超新星自動サーベイ(The All-Sky Automated Survey for SuperNovae :ASAS-SN)


空は広大です。現代においても、人間の眼だけが、私たちの宇宙の性質や物理を解き明かすうえで極めて重要になる、突発天体や変光星、変動的で激しい現象を観測することができます。私たちはこの状況に挑むべく、「全天超新星自動サーベイ(The All-Sky Automated Survey for SuperNovae :ASAS-SN)」プロジェクトを運用しています。
現在このプロジェクトでは自動で、毎晩空全体をカバーし、人の目の限界よりも5万倍も暗い18等級までの天体を観測しています。
こうしたプロジェクトは確実に多くの重要な発見をすることができ、その中には天体物理学の分野にとって革新的なものもあるでしょう。ASAS-SNをLSSTならぬ「SSST (Small Synoptic Survey Telescope)」と考えてください。全天の比較的明るい天体をより高頻度で観測することで、LSSTやその他の時間領域天文学のプロジェクトを補完します。私たちの高頻度サーベイで発見されるのは銀河系内や銀河系外の比較的明るい突発天体なので、他の比較的小型の望遠鏡でも迅速に追跡研究が容易に行えるので、そういった意味でも非常に貴重です。

ASAS-SNは現在世界中に配置した24台の望遠鏡で構成されています。「Brutus」として知られる(この名前はオハイオ州立大学のマスコットキャラクターにも由来します)ASAS-SNの最初のユニットは4台の口径14cmロボット望遠鏡からなり、ラス・カンブレス天文台のハワイ観測所に設置されました。
ASAS-SNの2番目のユニットは「Cassius」と名付けられ、同じく4台の口径14cmロボット望遠鏡からなり、チリに設置されました。2017年にはラス・カンブレス天文台の他の2つの観測所に合計8台の望遠鏡が追加され、南アフリカに「Cecilia Payne-Gaposchkin」ユニットが、テキサス州に「Henrietta Leavitt」ユニットが設置されました。同じ年にはチリに5番目のユニット「Bohdan Paczyński」が設置され、最後に2018年には6番目のASAS-SNユニット「Tian Shan」が中国に設置されました。
これらすべての望遠鏡によって毎晩見える範囲の空全体を観測でき、私たちのネットワークは気象条件の影響を受けにくくなっています。

以下はそれぞれ「Bohdan Paczyński」「Cassius」「Henrietta Leavitt」ユニットの望遠鏡の写真です。