プラネTESSへようこそ!皆さんのご協力により、私たちは太陽系の外の恒星を公転する新しい惑星を発見できます!
トランジット系外惑星探査衛星 (TESS)は、太陽系の外にある惑星を探すための膨大な量のデータを提供しています。TESSは2年ごとに全天の 20万個 もの近傍の明るい恒星を観測し、2分おきにその明るさを測定し記録しています。みなさんの協力でたくさんの興味深い惑星系について解き明かし、そうした世界の形成や進化について調べることができます。私たちの発見は、「私たちは宇宙で孤独なのか」という疑問の答えへ1歩近づくものとなるでしょう。
あなたは天の川銀河の中の近傍恒星で、惑星の第一発見者になれるかもしれません!やってみたくないですか?
太陽系外惑星とは、太陽以外の恒星の周囲を公転する惑星です。最近50年の望遠鏡の観測技術の飛躍的向上により、20世紀末に最初の1個が発見されて以降何千個も発見されてきました。発見された系外惑星の中には太陽系の惑星とよく似たものもありますが、ホットジュピターと呼ばれる主星の近くを周る巨大惑星や、周連星惑星と呼ばれる連星系を公転する惑星など、奇妙な惑星系にも数多く遭遇しています。
最大級の望遠鏡でも系外惑星を直接観測することは非常に困難です。なぜなら、惑星の光は主星のはるかに明るい光に覆い隠されてしまうからです。代わりに、主星の光を監視することで惑星の存在を間接的に捉えることができます。
TESSは個々の恒星の明るさの変化を長期にわたって記録します。測定した明るさの時間変化を表す図は 光度曲線 として知られています。系外惑星が主星の手前を通過(トランジット)すると、主星の光は一時的に暗くなり、光度曲線に 谷間 が生まれます。この系外惑星検出手法はトランジット法として知られ、その絶大な威力が証明されています。
以下は光度曲線からトランジットがどう見えるかの模式図です。惑星が主星の手前を通ると、私たちに届く主星の光量が減少します。
トランジットを観測するには、惑星系の向きが 主星と地球の間を惑星が通過するように (地球から見て、下の図の右側にように)位置関係が揃っている必要があります。この場合、惑星が恒星の周囲をちょうど1周するごとにトランジットの減光が起こります。惑星が私たちの視線方向上で主星と重ならない場合(下図左)、トランジットによる減光は観測できません。
以下は惑星が主星の手前を通過する際の光度曲線の振る舞いのアニメーションです。
光度曲線の谷間の深さは、惑星と恒星の大きさによります。まず、ある1個の恒星を考えると、トランジットを起こす惑星が大きいほどより多くの光を覆い隠すので、光度曲線の谷間も深くなります。逆に、惑星の大きさが同じ場合は、恒星が大きい場合(たとえば太陽のようなG型星)、小さな恒星(たとえばM型矮星)よりもトランジットの深さは浅くなります。
トランジットの深さは惑星によって大きく異なります。たとえば太陽系最大の惑星、木星は太陽の前を通過すると1%ほどのトランジットの深さ(減光量)を示します。しかし、木星よりはるかに小さい地球の場合は、トランジットを起こしても0.01%の光しかブロックしません!このプロジェクトで示す光度曲線のプロットの縦軸の数字は、恒星が放つ平均光量に対する減光量をパーセンテージで表したものです。トランジットの深さと恒星の大きさが分かれば、以下の等式により惑星の大きさを算出できます。
私たちの太陽系には8個の、さまざまな大きさを持つ惑星があります。なので、他の恒星にも複数の惑星が存在しても驚かないでしょう。こうした系外惑星系の光度曲線では、異なる惑星が起こす複数種類のトランジットが見え、それぞれのトランジットの深さが惑星の大きさの違いを表します。また、惑星ごとに恒星を公転する速度も異なるので(たちえば木星は地球の12倍もの時間をかけて太陽を1周します)、トランジット同士の間隔は不規則に離れていることもあります。以下に複数惑星系の光度曲線の例を示します。もし分類中に複数惑星系を見つけたら、すべてのトランジットをマークしてください。
よく研究されている複数惑星系の1つがTrappist-1系で、地球から100兆km離れたこの恒星には7個の惑星が見つかっています。この惑星系のトランジットを観測できるという事実だけで驚くべきことです。Trappist-1のトランジットを観測することを置き換えると、地球と月の距離の半分くらいの位置にある車のヘッドライトの正面をハエが通過する様子を捉えるようなものです。しかし私たちにはそれができるのです!
天文学上の最大の未解決問題の1つが、惑星系は年月が経つとどう変化するのか という疑問です。異なる年齢の恒星の周囲の惑星を発見し調べることで、この疑問に答えを出し始めることができます!
これらの古い恒星の周囲から惑星を見つけ、こうした天文学の疑問の答えることに関心のある方は、本プロジェクトのトップページから「年老いた恒星周りの惑星を見つける」を選択してください(現在準備中)。ここでは、年老いた恒星の光度曲線だけを皆さんに見せ、惑星と恒星がどのように共に年を重ねていくか理解するカギを探すことができます。また、私たちの太陽系が今から数十億年後にどのような姿をしているかを垣間見ることもできます!
こうした惑星は魅力的ですが、見つけにくい理由があります。前述の通り恒星の大きさはトランジットの深さに影響します。星は年を取るとその大きさが増大するので、データの中にあるトランジットの深さも非常に浅くなることが予想されます。しかしそれでも発見可能であると考えています!
年老いた恒星とは何を意味しますか?
恒星や惑星はガスとダストからなる巨大な雲が崩壊して形成され、恒星系・惑星系になります。形成後のほとんどの時間(90%)以上を恒星は「主系列星」(中年期の星と考えてください)として過ごします。この間恒星はエネルギー(光として放射され私たちが目にするものも含む)を、中心核で水素をヘリウムにすることで生成します。エネルギー源を使い果たすと恒星はそのライフサイクルの次の段階に移り、年老いた星となります。この段階の恒星は「後主系列星」「進化した恒星」などと呼びます(天文学者は1つの現象を複数の名前で呼ぶことがしばしばあります)。最終的に恒星が利用可能なエネルギーを全て使い果たすと、恒星は白色矮星のような最終天体を残します(全ての恒星がそうではありませんが、太陽のような恒星を含む多くの恒星はそうなります)。面白いことに、白色矮星の重さが太陽くらいあっても、その大きさは惑星サイズで、とてもとても高密度です。
以下は太陽のような恒星の進化の概略です。私たちの太陽の年齢は45億年で、主系列段階を半分ほどすぎたあたりです。
年老いた恒星限定のワークフローは近日公開予定ですのでお待ちください!
多くの恒星は単独で存在せずに、2個、または3個以上の恒星が互いに公転する系を形成します。
恒星の片方がもう片方の、私たちから見て正面を通過すると、惑星のトランジットと同じように観測される明るさは減少します。これは 食連星 と呼ばれており、その光度曲線には通常2種類の異なる深さの谷間があります。
もし食連星のような光度曲線を見つけたら、トランジット部分を同様にマークしてトークページで知らせてください。
さらに複雑なことに、恒星自身が明るさを変えることによる光度曲線の変化もよく目にします。たとえば恒星表面に、太陽黒点のような恒星黒点があれば、恒星の自転とともに観測される明るさは周期的に変化します。この変光はゆっくり徐々に進み、典型的には数日かかります。系外惑星のトランジットはもっと急速に進み、数時間から数十時間しかかからず、光度曲線ではもっと狭い谷間が生じます。
また、恒星によっては脈動を起こすものもあります。これは時間経過に連れて恒星の半径が変わり、その結果明るさも変化します。脈動にかかる時間は数時間ととても急速なものから、何年もかかる非常に遅いものまであります。
TESSは2018年4月18日に、スペースX社のファルコン9ロケットで打ち上げられ、現在も月の2倍の速度で地球を周回しています。2年間で、TESSは全天を26分割したセクターと呼ばれる領域を順番に観測します。それぞれのセクターは4台の非常に高性能なカメラで観測され、1台あたり24度、合計96度の領域を撮影します。
TESSが現在どこを向いているかはこちらで確認できます。
それぞれのセクターの恒星は少なくとも27日間続けて、2分間おきに明るさが記録されます。
TESSのミッションについての詳細は以下の動画もご覧ください。
TESSは偉大ですが完璧ではなく、複数の光度曲線において同じタイミングで現れる系統的な効果があります。
これらの影響はデータ点の散乱や、光度曲線の急上昇として現れます。セクター1とセクター2では特にこのような影響が多くありましたが、TESSの振る舞いについて理解が進むとともにこのような影響や頻度は減りつつあります。
衛星は地球にデータを、光度曲線の14日目付近で4時間かけてダウンリンクしますが、その際装置温度などの衛星のコンディションがわずかに変化します。これにより観測データに「グリッチ」が生じるので、その部分の光度曲線はマスクで除いています。さらにこのマスクした部分周辺でも異常なふるまいを示すことがあり、これをフォーカスイベントと呼んでいます。
本プロジェクトの主要な目標は惑星の多様性や、どのような惑星系が存在するかをより理解することです。
本プロジェクトで多くの惑星系が見つかると思いますが、結果を正しく解釈するには、分類結果がどれほど完璧かを知る必要があります。たとえばとても小さな惑星はTESSデータから発見しにくいですが、見つからなかったからといってそのような惑星が存在しないということにはなりません。
どのような惑星がこのプロジェクトでどれくらいの収率で発見できるかを知るため、私たちは定期的にシミュレーションによる光度曲線を皆さんに提示します。シミュレーションによる光度曲線なので当然私たちはトランジットの深さ、公転周期、変光の有無といったあらゆるパラメーターをあらかじめ知っています。皆さんがこのシミュレーションデータを分類した結果は、惑星の大きさ(トランジットの深さ)や公転周期(トランジットの回数)の関数として、このプロジェクトでの惑星捜索の完全性を定義するのに不可欠です。これは、惑星や太陽系がどう形成されたかという最も興味深い疑問に答えるために重要な部分です。
覚えておいてほしいのは、別に私たちはシミュレーションデータで皆さんを訓練・テストしているわけではないのです。皆さんの分類を正しく理解できるよう、こちらのシステムをテストしているのです。皆さんがシミュレーションデータを見た際には、分類を終えた直後に必ずその旨を表示します。分類前ではなく後にしているのは、バイアスが働かないようにするためです。シミュレーションは、皆さんが自分の分類結果のフィードバックを受け取ることのできる機会でもあります。多くの分類は正しく行われますので、トランジットを見逃したと表示されても落胆することはありません。シミュレーションされたトランジットの中には、見つけるのが極めて困難なものも意図して混ぜています。これも全体結果の解析のために必要です。
フィードバックは下の画像のように示されます。緑のマークは皆さんが正しくマークしたトランジット、赤は皆さんが見逃したトランジットです。トランジットが非常に小さく見ることのできないものもあります。これは主星よりはるかに小さい惑星をシミュレーションしたものです。主星の変光によってもトランジットは見えにくくなります。分類回数を重ねると、シミュレーションの表示頻度は減少します。
世界中の研究者がより効果的なコンピューターアルゴリズムを作り、TESSの光度曲線の繰り返す信号を見つけようとしています。こうした技術は既に惑星発見に絶大な効果を生むことは証明されています。しかし、機械のすることには限界があります。惑星系は複雑で、1つとして同じ光度曲線はありません。さらに恒星の変光まで組み合わさるとコンピューターアルゴリズムは混乱し、惑星を誤検出したり見逃してしまうことがあります。
しかしヒトの脳は、自動化されたルーチンでは見逃されるようなパターン認識に非常に優れており、そのため皆さんが必要とされています!
Zooniverseのボランティアは、TESSの前身の衛星「ケプラー」のデータから100以上の新しい惑星系を発見しており、TESSデータでさらに発見できると期待しています。
次の新しい惑星はあなたが発見するかもしれませんよ?
本プロジェクトは献身的なチームによる成果物であり、ボランティア参加者の努力によりその価値が生み出されています。クレジットの付与を確実にするため、本プロジェクトのトークページの情報を使った出版成果物を公開する方は以下の点を厳守してください。