完了しています!このプロジェクトでは現在既に全てのデータが分類されました。

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研究


同じクランプ銀河を左からSDSS,すばる望遠鏡のHSC,ユークリッド望遠鏡で観測した画像。望遠鏡の解像度が上がるにつれて星形成クランプがより詳しく見えます。右下の明るい天体は前景の恒星です。

概要 - 新しいツールが新しい科学を主導する

本プロジェクトでは、より強力な望遠鏡と機械学習という新しいツールの利点を生かして、巨大な星形成クランプの謎多き性質についてより深く調べます。名前の通り、このクランプは星形成に関係があるようであるこということまでは分かっていますが、どのように関係しているのでしょう?近傍銀河のクランプで起こる星形成プロセスは、初期宇宙で起こるそれとは同じでしょうか?クランプ銀河の数や、その銀河の中でのクランプの位置、明るさや色、質量といった特性を測定することでその答えが見えてくるかもしれません。
私たちの冒険は前身のプロジェクトGalaxy Zoo: Clump Scoutで、スローンデジタルスカイサーベイ(SDSS)の画像を用いて始まりました。このプロジェクトによって銀河進化の最終段階において巨大な星形成クランプがどれくらい珍しいかをよく理解することができました。
しかしクランプのほとんどはSDSS画像では、上に示したように大きな塊のようにしか見えません。しかし今、ユークリッド宇宙望遠鏡のような新しい望遠鏡によってもっと詳細な画像が得られ、巨大なクランプの中にさらに細かい構造があるかを観察できるようになりました。そこで私たちはクランプを数えなおし、母銀河内での位置やその特性を調べることができます。
しかし1つ問題があり、ユークリッドは私たちのボランティアの皆さんの力を借りてさえも調査しきれないような膨大な数のクランプ銀河を発見するでしょう。ですので私たちは機械の力の補助が必要です。2018年に前身のプロジェクトを始めたとき、そのプロジェクトで集まった分類ラベルを機械学習アルゴリズムの訓練に使うことは想定していませんでした。しかしユークリッドのようなはるかに大規模な銀河サーベイプロジェクトを前にして、私たちはSDSS画像で皆さんがつけたラベルを、ユークリッドのデータセットで行いたい科学研究に活用でき、将来の研究に備えることができると気づきました。
そのため再び再開します!私たちのAIは、ユークリッドの画像を見てそこからクランプや恒星その他の天体のある位置を予測しますので、皆さんはそのAIによるラベル付けが正しいかどうか判断し修正してください。
皆さんの分類を集めてAIの改良に用います。改良だけかと心配されるかもしれませんがその必要はありません、科学研究にはやることが数多くあり、皆さんの助力がいろいろな形で必要となります。クランプ銀河やユークリッド望遠鏡、機械学習戦略や皆さんの努力によって解決される科学的疑問についての詳細は以下を読み進めてください!

クランプ銀河

近傍宇宙の銀河はほとんどが渦巻、楕円、不規則形に分類できます。
(この分類について初めて聞いた方はNASAのこちらのページが役立ちます)
しかしより遠方の(若い)宇宙では銀河の形状はさらに多様で、宇宙の進化の中で塊状の構造(クランプ)を持つ銀河はより支配的です。以下の画像はハッブル宇宙望遠鏡で撮影された8枚の遠方のクランプ銀河の画像です。これらはGalaxy ZooのボランティアによってGalaxy Zoo: Hubble (GZH)プロジェクトの中で分類されました。

過去の銀河は激しい星形成が起こった時期を経ており、その時期の星形成が不規則な形状に対応していると考えられています。この星形成の期間はその後終了し、今日ではほとんどの銀河で星形成が落ち着き、近傍宇宙でよく見られる渦巻、楕円、不規則銀河が中心となっています。

Galaxy Zoo: Clump Scout

私たちは2019年にClump Scoutプロジェクトを立ち上げ、初期宇宙で観測されるクランプ銀河と比較評価するために近傍のクランプ銀河の当時最大のカタログを構築することを目標としていました。
Galaxy Zoo: Clump Scoutプロジェクトの初期成果はSDSSレガシーサーベイでボランティアの皆さんがアノテーションを行った結果に基づいています。
これらの結果は、近傍の(年を経た)宇宙では遠方の(若い)宇宙と比べてクランプ銀河が珍しいという示唆を得られました。 近傍の星形成銀河のうちはっきりとクランプを持つものは5%未満でしたが、宇宙の歴史の浅い星形成銀河では50%ほどがクランプを有します。この近傍宇宙でのクランプ銀河の希少性は、宇宙が進化して現在に至るにつれて星形成が低調になったことと関連するようです。
以下の画像はこうした珍しい近傍のクランプ銀河を8つ示しています。

こうした近傍銀河はハッブル宇宙望遠鏡が観測した遠方銀河とその形はよく似ています。これはちょうど、ハッブル宇宙望遠鏡で分解できる遠方銀河の実際の大きさと、SDSSで解像できる近傍銀河の実際の大きさが似ているからです。言い換えると、ハッブル宇宙望遠鏡で遠方銀河を見るとSDSSで近傍銀河を見るときと同じくらいの画像のぼやけ方になります。

本プロジェクト

そして今、本プロジェクトが、より解像度の高い画像と新たな疑問を携えて新しく戻ってきました
ユークリッドの非常に分解能の大きなデータにより、前身のプロジェクトで得られた結論を再検証し、近傍宇宙におけるクランプ銀河の分布についてより確証をもって特性づける機会が得られました。
以前のSDSSとの結果を比較すると、さらに遠方の宇宙(つまり初期の宇宙)でのクランプ銀河のサンプルも得ることができます。皆さんの助力で、私たちはクランプとその他の星形成メカニズムの間の関係や役割をよりよく特徴付けることのできる、より詳しいクランプのサンプルを入手できます。

このプロジェクトではユークリッド宇宙望遠鏡に搭載された可視撮像装置(VIS)と近赤外分光測光装置(NISP)が撮影した画像を使用します。ユークリッドの画像はSDSSの画像よりずっと鮮明に細部が写っており、銀河内のクランプの発見がかなり楽になります。
そのため遠方の銀河もより詳細に観察できます。なぜならユークリッドは宇宙望遠鏡として、SDSSが地上から観測するのに対し、大気のない地球外から観測ができるからです。それゆえ、ユークリッドのカメラは天候の影響を受けず、地球の大気を通過した揺らいだ光を写すこともありません。さらにVISカメラは36枚のCCD(電荷結合素子と呼ばれる、光を電気信号に変換するセンサー)で合計6億画素に及び、これはSDSSの30枚のCCDが1.2億画素であったことと比べても大きいです。
SDSSの画像で明るい対称形な光の塊だったクランプが、ユークリッドではより詳細に複雑な形状まで分解でき、クランプ自身の内部構造まで把握できるようになります。
内部構造を測定し、高解像度銀河シミュレーションの結果と比較することで、クランプの形成過程やクランプが母銀河、周囲の銀河間空間にどう影響するかについて知る手掛かりが得られます。
次の画像は(一番上で示したものと同じ)、SDSS(左)、すばる望遠鏡HSC(中)、ユークリッド(右)の画像を同一のクランプ銀河について比較したものです。SDSSの画像では銀河すらほとんど見えませんが、HSCでははっきりと銀河が見え、非対称形なクランプも見えています。そしてユークリッド画像では、SDSSやHSCでは単一に見えていた光の塊が実際は複雑な内部構造を持つ星形成領域だったことまで分かります。

深層学習によるクランプ検出の高速化

AIの答えの品質を改良するため、皆さんの力が不可欠です。本プロジェクトで皆さんが行った分類は、ユークリッドの次の大規模データリリースが行われた際にその画像を解析するのに用いる機械学習モデルを微調整することに活用されます。
ユークリッド宇宙望遠鏡はサーベイ観測用に設計されており、サーベイを完遂すれば10億個を超える銀河の画像が得られ、そのうちの2.5億個はもしクランプが含まれていれば十分その存在を確認できるほどには分解されているはずです。これほど多くの銀河からクランプを見つける唯一の現実的な方法は、人の目と機械学習手法を組み合わせることで、本プロジェクトの主要目標は私たちに必要なこの機械学習モデルを構築することです。
前身のプロジェクトGalaxy Zoo: Clump Scoutの結果を用いて、私たちはすでにSDSS画像からクランプを検出しラベル付けできる深層学習モデル(AI)を訓練しました。
そしてSDSSとユークリッドのどちらでも観測された少数の銀河について、ユークリッドQ1データと呼ばれるユークリッドが2025年に最初に公開した画像からクランプの周囲をボックスで囲むように訓練した別のモデルを開発しています。
私たちのユークリッドAIはかなり正確ですがそれでも完ぺきとは言えません。時々、私たちの銀河系の恒星(前景の恒星と呼びます)や遠方の小さな銀河をクランプと誤認し、またある時はクランプを見逃したり、クランプと識別した領域の精度が甘かったりします。今後数年間で送られてくるユークリッドの新しいデータに対応できるよう、人間と機械の最高のパートナーシップを構築すべく、AIの予測を修正し改良するために皆さんの助力が必要です。

クランプと前景の恒星、アーティファクトを見分ける

クランプの判別を始めると、特にAIがクランプを前景の恒星と誤認したりその逆でないかを見分けようとすると、皆さんはその違いを見分けることが時々かなり難しいことに気付くと思います。これには理由があり、ユークリッドのミッションチームが画像から私たちの銀河系の恒星である前景の恒星を最初からできるだけ取り除こうとしているからです。ですのでユークリッドのデータ処理パイプラインではこの除去が行われています(さらに技術的な詳細を知りたい方はこちらのブログ記事をご覧ください)。
ほとんどの恒星についてはこの除去がうまく行きましたが、残念ながらこの処理も完ぺきではなく、場合によってはかえって私たちの分類を困難にしています。星のカメラ上の位置によっては、除去処理で恒星の痕跡が塊として星があった場所に残ってしまうことがあり、これがクランプとややこしく見えます(下の画像の左側)。
ではどうすればいいのでしょう?いつものように、最善を尽くして分類してください。私たちは同じ画像について星かクランプかの判別の複数のボランティアの皆さんの答えを集めて、集合知を用います。また、マークがすべて収集されていれば、ユークリッドの恒星カタログとの比較もできます。このカタログにもすべての恒星候補をカバーしているわけではないですが、ほとんどの星は見つかるはずです。星とクランプの違いの詳細や具体例はフィールドガイドを参照してください。

一方で宇宙線などのアーティファクトを除去した痕跡が混ざった例は比較的簡単に判別できます。アーティファクトの多くは画像全体を横切る茶色の線として現れますが、時々画像の一部が切り取られたような茶色の塊に見えることもあります(上の画像の右側)。

未解決の疑問

クランプとその母銀河のカタログを構築していくと、これらの謎多き天体が提示するいくつかの大きな疑問について挑むことができます。
私たちはまだクランプの形成過程の詳細を知りません。銀河間の相互作用によるのか、それとも大きなガス雲が崩壊して急速に恒星を誕生させる銀河内部の不安定性によって引き起こされるでしょうか?その両方が混在するのでしょうか?銀河形成や銀河進化のシミュレーションではクランプの形成過程が異なれば、クランプの内部構造の特性も異なることが分かっています。
また、クランプが時間とともにどう変化するのかもまだ完全に分かっていません。いくつかのモデルでは大きなクランプは最終的に銀河中心に移動して銀河バルジを形成すると予測されています。別の理論モデルではクランプは短命で、銀河中心に到達するまでに消滅すると示唆されています。どちらが正しいかを判断することで、円盤銀河の形成や進化について劇的な影響を与えるかもしれません。
本プロジェクトでは、前身のプロジェクトGalaxy Zoo: Clump Scoutよりも多くの銀河からクランプを見つけていただきます。宇宙の歴史のより初期からあった暗く遠方のクランプも検出できるようになりました。
皆さんには今後10年間でユークリッドが届けてくれる素晴らしい画像の解析への準備に携わっていただきます。
これらのデータは私たちが今持っている疑問に答える役に立ちますが、同時に多くの新しい疑問を残すでしょう。

最後に、皆さんなしではこれらを実施することはできませんでした!


このプロジェクトはNASA市民科学シード資金提供プログラム(CSSFP)(NASA市民科学プロジェクトについてはこちら: science.nasa.gov/citizenscience)、"ELSA: ユークリッドレガシーサイエンス先進解析ツール" (助成金番号 no. 101135203)、NSF Award IIS 2006894の資金提供を得て運用しています。このプロジェクトは欧州宇宙機関のユークリッドミッションのQ1データを使用しています。詳細はこちらcosmos.esa.int/web/euclid/euclid-q1-data-release