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本プロジェクトの前身であるGalaxy Zoo: Clump Scout プロジェクトの初期成果は、スローンデジタルスカイサーベイ(SDSS)のレガシーサーベイの画像をZooniverseのボランティアのみなさんにアノテーションを行っていただいた結果に基づいています。2つの論文として出版されたこの初期成果以降も、私たちのチームは皆さんによるクランプのマーキングをいくつかの他の研究に応用しました。上記ページではその成果を出版されたプロジェクトの3編目、4編目の論文として紹介していますが、こちらでも紹介します。
皆さんから前身のプロジェクトで集めたアノテーションについてまず行ったのは、SDSSサーベイから観測された約24万個もの銀河から巨大な星形成クランプを捜索するために深層学習モデルを訓練することでした。訓練の結果改良されたモデルは、捜索対象とした34246個の銀河から41445個のクランプを発見しました。
このモデルの開発とテストについての論文はこちらのArXivでhttps://arxiv.org/abs/2312.03503ご覧ください。
こちらは、クランプの形成に関する私たちのより詳細な研究成果です。この研究は前身のプロジェクトを用いたものですが、皆さんのご協力で作成されるクランプ銀河のカタログを私たちが、機械の助けも借りながらどのように研究に活用しているかを垣間見ることができるでしょう!
巨大な星形成クランプは大きく2種類に大別されます。In-situ(その場由来)なクランプはその母銀河内で巨大で低温な水素ガスが重力崩壊を起こし、比較的短時間で数億個もの恒星を誕生させるものです。一方でもう1つのex-situ(外部由来)なクランプは比較的最近に他のクランプ銀河と合体した際の、他の銀河の残骸と考えられています。
拡張されたクランプ銀河のカタログと、当初のテストでクランプを持たないと判明した銀河を用いて、私たちは密度の高い環境(銀河間の平均距離が小さい)の銀河と密度の低い環境(銀河間の平均距離が大きい)における、クランプ銀河の出現率を測定しました。この測定により、私たちのカタログ内のクランプが、内部で誕生したものなのか外部で誕生したものなのか、どちらが優勢を占めるかを検証することができました。
環境に依存する要因としてクランプの存在量を測定することは、クランプの形成メカニズムにどう寄与するのでしょうか?前述のように、銀河内部でクランプを形成するには銀河内に大量の低温ガスが存在する必要があります。ガスを構成する分子の相対運動を遅くするため、このガスは低温である必要があります。ガスが高温だと分子の運動が激しくなり、星形成のための重力収縮が止まってしまうからです。
高密度環境では、銀河間の相互作用や銀河内の内部エネルギーが大きくなり、銀河間物質のガスが槓子されます。このガスが銀河内に落下しても、高温なため星やクランプをすぐには形成できません。一方で比較的低密度環境での銀河間ガスはより低温なため、その環境下での銀河に取り込まれると収縮してクランプを形成しやすくなります。これらの理由より、in-situなクランプ形成は低密度環境で起こりやすいと言えます。
しかしex-situなクランプではこの推測は当てはまりません。これらは今いる銀河の外側で形成されているので、その存在量はクランプが今いる銀河やその周囲の低温ガスの存在量に依存しません。銀河の外で誕生したEx-situなクランプは、そうしたクランプが生じる原因である銀河合体が起こりやすい環境、つまり高密度環境でより多く存在すると考えられます。
まとめると、もしクランプ銀河が低密度環境で多いと分かれば、クランプが主にin-situで形成されているという証拠になりますし、逆に高密度環境で多ければex-situで形成されていることが多いと言えるのです。
それでは結果はどうなったのでしょうか?結果をそのまま言えば、クランプ銀河はより低密度環境で多かったです。しかしこれはどのように解釈すべきでしょう?これは、私たちのカタログ内のクランプがin-situなクランプであることを示すのでしょうか、それとも何か別のメカニズムが生じているのでしょうか?
実際、その答えは両方であると考えられます。しかしその理由を説明する前に、まず天文学者が固有星形成比と呼んでいる量について説明する必要があります。どの銀河についても、誰でもその銀河が星を形成している速度と、すでにその銀河に含まれる恒星の総質量の比率を計算できます。この比率を固有星形成比、sSFRと呼びます。分かりやすい例えでいえば、固有星形成比は銀河がその大きさに対してどれくらい活発で生産的であるかを示しています。幼児とプロのアスリートを考えてみてください。1年で彼らの体重が5kg増えたとき、その成長量(星形成率)は全く同じです。しかし体重10kgの幼児が5kg増えることは、体重に対する成長量の比率は大きく(大きなsSFRに対応)、体重100kgのアスリートが5kg増えることはそれほど大きな比率での変化ではありません(小さなsSFRに対応)。もちろんアスリートが50kg増えれば、比率でも同じになります。
では私たちの研究結果に話を戻しますと、クランプ銀河とクランプを持たない銀河を、似たようなsSFRを持つ銀河ごとにグループ分けし、そのグループ間で比較すると、もともと見えていたクランプの存在の環境依存性が消失しました。つまり特定のsSFRをもつ銀河の集団の中では、周辺の密度が大きくとも小さくともクランプを持つ確率は同じです。
結論として、銀河がクランプを持つかどうかは、周囲の環境ではなくその銀河のsSFRの値によって直接決定されるようです。高いsSFRを持つ銀河ほどクランプを持つ傾向にあります。低密度環境にある銀河ほどクランプを持つように最初見えていたのも、低密度環境にある銀河は平均的にsSFRが高い傾向にあるためです。これは、「相関関係は因果関係ではない」という格言をまさに表しています!
ではこれがin-situと ex-situの疑問にどう関係するでしょう?
ex-situのクランプの集団が大きく支配的である場合を考えてみましょう。この場合、その銀河のsSFRに関係なく、高密度な環境ほどクランプを持つ可能性が高くなります。なぜならex-situなクランプの存在量は銀河合体が起こる確率にのみ依存し、合体した銀河のsSFRには依存しないはずだからです。
そして、クランプがsSFRにのみ依存すること(そしてsSFRを適切に分析しないと、低密度環境にあるほどクランプを持つということ)は、カタログ中のex-situなクランプの数はin-situなクランプよりはるかに少ないことを意味します。さらに、in-situなクランプ形成を起こすプロセスは、通常の星形成を起こすプロセスが非常に極端になったケースと言えるので、sSFRが大きな星形成が活発な銀河ほど巨大な星形成クランプが増えるということはとても理にかなっています。
この研究について詳しく説明した論文が以下にあります。https://iopscience.iop.org/article/10.3847/1538-4357/ad7119.