完了しています!このプロジェクトでは現在既に全てのデータが分類されました。
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このプロジェクトを通じて、私たちは宇宙の中でも太陽近傍にある褐色矮星を発見したいと考えています。こうした天体の研究によって、巨大惑星の大気や星形成プロセス、銀河系全体の化学組成、原始星組成の私たちの銀河系の恒星進化への影響などについてより詳しく知ることができます。
私たちと協力することで、一緒に褐色矮星として知られるクールな隣人を発見できます。望遠鏡のデータと、比較的容易にパターン認識ができる人間の脳の能力を使って、他の星や銀河、検出器のノイズに埋もれた実際の褐色矮星を発見できます。
褐色矮星とは、恒星と木星のような巨大惑星の間の質量をもつ天体です。以下の想像図にように、褐色矮星は他の恒星を公転することなく単独で恒星間空間を漂っている木星の特大バージョンの天体だと考えることができます。
(Credit: NASA/JPL-Caltech)
残念ながら、Y型矮星(知られている最も冷たい褐色矮星のグループ)の発見はこの一連の研究のボトルネックになっています。こうした天体は非常に非常に暗いので、それらが明るく見えるようになる太陽のすぐ近くを探す必要があります。
機械学習アルゴリズムを使って、私たちはWISEデータベースからある程度の動きを持つ移動天体のような候補がある位置を絞り込みました。しかしこのアルゴリズムは検出器のノイズや回折スパイクといったアーティファクトに騙されやすいです。こうした潜在的な褐色矮星候補を精査する最も効率的な方法こそが、市民科学の力で膨大なデータを短時間で確認することです。
褐色矮星は「恒星のなりそこない」とも言える、恒星と惑星の中間程度の質量をもつ天体です。こうした天体の質量は木星よりは重いですが、水素が核融合を起こすのに必要な質量には達しておらず、結果的に恒星と太陽系外惑星の両方の特徴を兼ね備えることになります。
恒星とは、内部の重力圧が水素の核融合を起こすのに十分になる質量をもっており、この反応によって太陽は輝き、もっと専門的に言えば可視光を発します。恒星が光っているからこそ、宇宙の中で恒星を見つけるのは簡単です。一方で惑星は核融合に必要な質量をもたず、可視光では自ら光を放たないので、検出はとても困難です。褐色矮星は惑星と恒星の境界領域にあり、水素の核融合を維持するためには質量が足りないものの、形成時からわずかな光を放つには十分な質量をもっています。しかしその光は人の目には見えない赤外線なので、特別な望遠鏡を用いて検出します!
褐色矮星の大気は巨大な太陽系外惑星とよく似ていますが、惑星と違い主星のはるかに明るい光に干渉され邪魔されることなく観測できます。これらの褐色矮星の大気には、地球で見られるような有機化合物の形成において重要な分子である、水やメタンの強い兆候があります。一部の褐色矮星は、起源となる惑星系から放り出された浮遊惑星である可能性もあります!これらの天体を調査することで、他の星系の形成や宇宙全体の様々な化学組成について深い洞察を得ることができます。
褐色矮星は暗いので、プロキシマ・ケンタウリ(知られている中で太陽に最も近い恒星)よりも近い位置にまだ見過ごされている褐色矮星があるかもしれません!
これは歴史的発見になりますが、あなたが最初にそれを見つけるかもしれません!
本プロジェクトでは、NASAの広視野赤外線探査衛星 (WISE)の望遠鏡が撮影した画像から褐色矮星を探します。WISEは2009年に打ち上げられ、観測が終了した現在もなお宇宙全体の銀河、太陽系外惑星や恒星の起源について知る手がかりを与え続けています。
(Credit: NASA/JPL-Caltech)
WISEの打ち上げ映像はこちらで視聴できます。
普通の(つまり主系列の)恒星や銀河や画像アーティファクトに比べて、褐色矮星は非常に珍しいです。たとえばWISEは何十億個もの銀河や恒星を検出しましたが、検出できる褐色矮星はおそらく数千個ほどしかないと考えられています。新しい褐色矮星候補を見つけるには、おそらく100から500の連続画像を見る必要があるでしょう。連続画像の中にはだいたい10%ほど、既に発見されている移動天体をわざと混ぜています。これによって、実際の移動天体がどう見えるかを定期的に確認でき、さらに研究チームが、受け取った分類の正確性を把握する役に立ちます。
褐色矮星は冷たく暗いため、私たちの近傍に位置するものしか検出できません。天の川銀河にある天体はすべて太陽に対して相対運動をしています。しかし、私たちは近くにある天体のほうが遠くにある天体よりも速く動くことを直感で分かることができます。
ピンと来ない方は今すぐ試してみましょう、あなたの目から30cmほど離して指を立ててください。そして片眼を閉じて、指を左から右へ握りこぶし一つ分動かしてみてください。次に腕をできるだけ遠くに伸ばして指を立て、同じように片眼を閉じてこぶし1つ分指を左右にずらしてみてください。
指が近くにある時のほうが、遠くにある時よりも見かけの長さ、角距離では大きく動いていることが分かったはずです。褐色矮星でも同じことが起こりますが、数十cm単位ではなく光年単位です!
バーナード星は、約6光年と比較的地球のそばにある赤色矮星です。その結果見かけの動きはかなり大きくなり、望遠鏡のデータでは以下のように見えます。
上の動画はループ動画なので、バーナード星は実際にはどの時点でも後ろに戻ることなく、基本的には同じ直線上を同じ方向に移動し続けます。
恒星の固有の移動速度のうち、視線に対して垂直の成分をvとしその天体の地球からの距離をdとすると、角速度は
と表されます。ここでvは時間に対する距離の単位(m/s や km/s)で、μは空を横切る見かけの速度で、天文学者はこれを固有運動と呼びます。固有運動は時間当たりの角変位の単位を持ります。近くの星の固有運動を表す際に便利な単位が秒角/年で、秒角は1度の1/3600に相当します。バーナード星は現在知られている恒星や褐色矮星の中で最大の、10.4秒角/年という固有運動をもっています。本プロジェクトを通じて、さらに固有運動の記録を破る高速な褐色矮星を発見できるかもしれません。
近傍の恒星の動きは固有運動が支配的ですが、空を横切る天体の動きにはもう1つ年周視差と呼ばれる要素もあります。太陽の周りを公転する地球の動きによって、地球から見た近傍星や褐色矮星の位置が毎年1年間で揺れ動くことで測定します。
Gaiaなどのカタログでは年周視差(parallax)はミリ秒角単位で記載されています。ミリ秒角でのGaia年周視差を太陽系からの距離(パーセク単位)に変換するには以下の式を使います。
パーセクでの距離 = 1000 / (ミリ秒角での年周視差)
年周視差が大きいことはその天体が近傍にあり、年周視差が小さいことはその天体が遠方にあることを意味します。
Gaia年周視差の値が50ミリ秒角であれば、太陽系からの距離は20パーセク(65光年)に相当し、これは天文学的には非常に近い距離です。Gaia年周視差が5ミリ秒角(5masと表します)は200パーセクに相当します。一般的にこのプロジェクトでは、最も興味のある褐色矮星は太陽系から100パーセク以内に位置しているはずです。
夜空を見たことがある人ならだれでも、星が様々な色をしていることに気づくでしょう。星の色はその温度に対応しており、青や白い星は相対的に高温で、バーナード星のような赤色矮星のように低温の恒星はオレンジや赤色をしています。温度による天体からの光の放射は黒体放射として知られています。
しかしこの現象は天体に限りません。一般的な白熱電球も同じように機能し、電気によって電球内のフィラメントが2300Kほどまで加熱されて可視スペクトルにまで達する黒体放射が発生します。それに比べて、太陽は5800Kの表面温度を持ちます。ただし広義の発光には数千度まで加熱される必要はなく、人間の体も光を出すのに十分な温度を持ちます!ただしあなたや、褐色矮星のような低温の天体が出している放射は人に見える可視光スペクトルではなく、赤外線の波長範囲です。
ありがたいことに、WISEやその拡張ミッションのNEOWISEのような現代の広視野赤外線サーベイは、褐色矮星が最も強く発する放射である波長3から5ミクロンの波長帯をカバーし、十分褐色矮星を検出できる感度を持ちます。そのため本プロジェクトで皆さんに見てもらうデータは、普通のカメラで撮ったような可視光画像ではなく、人間には見えない赤外線を捉えたものです。撮影後にデータは人が見えるように処理されるので、私たちは簡単に解析ができます。
褐色矮星やその発見方法についてさらに知りたい場合は、よくある質問のセクションを参照してください。
大きな発見が生まれることを願っています!
市民科学シードプログラムの助成金80NSSC21K1485を通じてこのプロジェクトを支援してくださったNASAに感謝しています。
本プロジェクトのスタッフの作業は、アメリカ国立科学財団との協力協定に基づき、大学天文学研究協会(AURA)が管理するNOIRLabによって支援されています。
本プロジェクトはWiseView画像切り抜きツールを使用しています。