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研究

私たちのミッション

本プロジェクトを通じて、私たちは太陽近傍にある連星系中の褐色矮星を発見したいと考えています!
褐色矮星を研究することで、私たちは太陽系外の巨大惑星の大気や星形成、天の川銀河全体の物質組成、さらに原始星材料の組成がどのように星形成や発達に影響するかを知ることができます。

褐色矮星は最も小さい赤色矮星と最も巨大な惑星の中間のサイズ(質量)を持つ謎の多い天体です。それぞれの褐色矮星は数十億年かけてゆっくりとしか冷えないため、任意の褐色矮星の年齢や質量を正確に決定することは困難です。若くて暖かい褐色矮星と、年老いた低温の褐色矮星が同じ質量を持つこともあるからです。これは褐色矮星の年齢-質量縮退と呼ばれ、観測から表面温度と光度を得たとしても、それが最初から低質量の若い褐色矮星なのか、それとも大質量の褐色矮星が年老いたため冷えてその温度になった姿なのかの判断がつかないのです。褐色矮星から得られるあらゆる知見を解明するには、まずはこの縮退を何とかして解決しなければなりません!


クレジット: NASA/ハッブル宇宙望遠鏡

幸いなことに、褐色矮星に伴星が存在する場合、つまり褐色矮星が連星系を構成している場合、この縮退を解くことができます。伴星については年齢や金属量、空間速度などの特性を解析することで、これらの測定値をそれを周回している褐色矮星にあてはめ、真の年齢や質量を決定でき年齢-質量の縮退を解消できます。
そうは言っても、連星系を構成する褐色矮星は珍しい存在です!
連星系を構成する褐色矮星は褐色矮星についての詳細な情報を提供するため、この分野におけるベンチマークとも呼ばれています。

本プロジェクトではNASAの広視野赤外線探査衛星(WISE)による観測データを皆さんによる助けを借りて視覚的に検証し、新しいベンチマーク褐色矮星を探します。今までの検証で見逃されていた褐色矮星を含む連星系を徹底的に探すことで、銀河系内の褐色矮星についてこれまで不可能だった研究へ踏み出すことができます。

WISEの全天サーベイについて

私たちはNASAの広視野赤外線探査衛星 (WISE) と呼ばれる宇宙望遠鏡の赤外線画像を用いて天の川銀河の太陽近傍をスキャンします。太陽のような恒星は可視光を中心に輝く一方で、褐色矮星は 主に赤外線で輝く ためです。

本プロジェクトでは、皆さんはWISEが観測した空の一画を調べ、2つの天体が画像内を共に移動している例を探します。そしてそのうちの少なくとも1つが赤いか褐色であれば、それはとても低温な褐色矮星で、あなたはそれを含む連星の褐色矮星を発見したことになります!

連星系の褐色矮星とは何ですか?

天文学者は、人類が古くから広く認識し視力検査などに使用してきた ミザールとアルコル以来長年にわたり連星系を研究してきました。
連星系とは、2天体が重力的に結びつき、共通重心の周りを公転しあっている系のことです。
本プロジェクトで注目しているのは褐色矮星を含む連星系、つまり公転しあっている天体のうち少なくとも1つが褐色矮星である連星系です。

WISE画像での褐色矮星連星は、ブリンクさせた数年分の連続画像で2天体が画面中を一緒に動くことで検出されます。この運動を共通固有運動と呼び、この連星系を共移動ペアなどと呼んでいます。
また、このようなペアを構成する天体それぞれを共移動天体と呼ぶこともあります。私たちが観察する実際の画像は以下の例と異なり白黒反転をしており、共移動天体などの天体は黒かオレンジ、茶色に、背景の空は白で表示されます。


クレジット: Mark's Astrophotography

これは画像内を2天体がはっきりと移動している様子です。

褐色矮星の連星の発見はどんな役に立ちますか?

褐色矮星は私たちの太陽などの通常の恒星と同じように形成されますが、持続的な水素の核融合を起こすには質量が不足しています。
一方で恒星は中心核で水素の核融合が起こり可視光を放つので宇宙の中でも比較的簡単に見つけることができます。惑星や太陽系外惑星はどの種類の核融合を起こすにも十分な質量を持たないため可視光をほとんど放たず、検出をはるかに困難にしています。褐色矮星は太陽系外惑星と恒星の境界ともいえる天体で、誕生時の熱の残存などで赤外線で光っています。
赤外線波長は、WISEのような特別に設計された望遠鏡を使って検出することができます。つまり褐色矮星は恒星と惑星をなめらかにつなぐ役割を持ち、低質量星の形成や巨大太陽系外惑星の大気について珍しい知見を得る機会となります。

しかし褐色矮星を恒星と惑星の中間の存在としてよりよく理解するには、少なくとも一定数の褐色矮星については年齢-質量縮退を解いておく必要があります。褐色矮星はその生涯を通じて非常にゆっくりとしか冷却せず、水やメタンなど大気に分子による複雑な痕跡を残しているため、年齢の決定が困難です。さらに褐色矮星の年齢の質量を決定し、金属量や星間物質の構造、重力の影響を知るには、個々の褐色矮星について正確な年齢を推定する必要があります。

私たちは褐色矮星と共移動する可能性のある伴星を見つけ、その伴星についての測定量を相方の褐色矮星に適用することで年齢などの推定が可能です。こうした伴星をもつ褐色矮星をベンチマーク褐色矮星と呼び、白色矮星や主系列星、さらには別の褐色矮星を伴星に持つ可能性があります。

さらに、褐色矮星の大気は巨大惑星とよく似ていますが、はるかに明るい主星の干渉を受けることなく詳細な観測が可能です。これらの褐色矮星の大気は地球に見られる有機化合物の生成にとって重要な分子である水やメタンの強い兆候を示します。褐色矮星の中にはもといた恒星系からはじき出された自由浮遊惑星に近いものである可能性のある天体もあります。このように、新しいベンチマーク褐色矮星によって褐色矮星をより理解することで、星形成や惑星系の形成について価値ある知見を得ることができます。


クレジット: NASA/JL-Caltech

なぜ人の目で見るのでしょうか?

典型的な主系列星や遠方の銀河と比べて褐色矮星はとても珍しい存在です。WISEは何十億もの銀河や通常の恒星を検出していますが、褐色矮星はおそらく数千個ほどしかありません。
つまり褐色矮星の連星となるとさらに珍しいのです!私たちの望遠鏡画像は回折スパイクや光学ゴーストなどのアーティファクトを多く含むため、褐色矮星の連星を完全に自動検出するシステムを開発することは困難です。
さらに、褐色矮星や連星ペアは他の恒星や銀河、検出器ノイズの中に埋もれている可能性が高いです。
幸いなことに、人間の目は共通の固有運動を持つ2天体を拾い上げることに関して機械より優れています!

WISE画像には既知の近傍恒星に近いため、褐色矮星の連星を発見するうえで優れている空域が数万か所あります。これらの近傍恒星の近くにある褐色矮星の伴星候補を最も効率よく効果的に発見する方法は、市民科学の力によって膨大なデータを短期間で解析することです。

固有運動とは何ですか?

褐色矮星は冷たく暗いため、私たちの近傍に位置するものしか検出できません。天の川銀河にある天体はすべて太陽に対して相対運動をしています。しかし、私たちは近くにある天体のほうが遠くにある天体よりも速く動くことを直感で分かることができます。
ピンと来ない方は今すぐ試してみましょう、あなたの目から30cmほど離して指を立ててください。そして片眼を閉じて、指を左から右へ握りこぶし一つ分動かしてみてください。次に腕をできるだけ遠くに伸ばして指を立て、同じように片眼を閉じてこぶし1つ分指を左右にずらしてみてください。
指が近くにある時のほうが、遠くにある時よりも見かけの長さ、角距離 では大きく動いていることが分かったはずです。褐色矮星でも同じことが起こりますが、数十cm単位ではなく光年単位です!

バーナード星は、約6光年と比較的地球のそばにある赤色矮星です。その結果見かけの動きはかなり大きくなり、望遠鏡のデータでは以下のように見えます。

上の動画はループ動画なので、バーナード星は実際にはどの時点でも後ろに戻ることなく、基本的には同じ直線上を同じ方向に移動し続けます。

恒星の固有の移動速度のうち、視線に対して垂直の成分をvとしその天体の地球からの距離をdとすると、角速度は

と表されます。ここでvは時間に対する距離の単位(m/s や km/s)で、μは空を横切る見かけの速度で、天文学者はこれを固有運動と呼びます。固有運動は時間当たりの角変位の単位を持ちます。近くの星の固有運動を表す際に便利な単位が秒角/年で、秒角は1度の1/3600に相当します。バーナード星は現在知られている恒星や褐色矮星の中で最大の、10.4秒角/年という固有運動をもっています

近傍の褐色矮星はバーナード星よりもずっと小さい固有運動を持つことが普通ですが、それでも目で認識可能です。本プロジェクトでは皆さんは様々な固有運動を持つ天体と出会うでしょう。私たちのプロジェクトのインターフェースは皆さんが様々な移動速度を持つ連星候補を観察するうえで不可欠になるはずです。詳細はフィールドガイドやチュートリアルを参照してください。

温度と色

夜空を見たことがある人ならだれでも、星が様々な色をしていることに気づくでしょう。星の色はその温度に対応しており、青や白い星は相対的に高温で、バーナード星のような赤色矮星のように低温の恒星はオレンジや赤色をしています。温度による天体からの光の放射は黒体放射として知られています。

この現象は天体に限りません。一般的な白熱電球も同じように機能し、電気によって電球内のフィラメントが2300Kほどまで加熱されて可視スペクトルにまで達する黒体放射が発生します。それに比べて、太陽は5800Kの表面温度を持ちます。ただし広義の発光には数千度まで加熱される必要はなく、人間の体も光を出すのに十分な温度を持ちます!ただしあなたや、褐色矮星のような低温の天体が出している放射は人に見える可視光スペクトルではなく、赤外線の波長範囲です。

ありがたいことに、WISEやその拡張ミッションのNEOWISEのような現代の広視野赤外線サーベイは、褐色矮星が最も強く発する放射である波長3から5ミクロンの波長帯をカバーし、十分褐色矮星を検出できる感度を持ちます。そのため本プロジェクトで皆さんに見てもらうデータは、普通のカメラで撮ったような可視光画像ではなく、人間には見えない赤外線を捉えたものです。撮影後にデータは人が見えるように疑似カラー処理されるので、私たちは簡単に解析ができます。

さらなる情報

褐色矮星やその発見方法についてさらに知りたい場合は、 よくある質問のセクションを参照してください!

このプロジェクトに含まれる資料はアメリカ航空宇宙局(NASA)の助成金や協定によって支援された研究に基づいています。この資料内に含まれるいかなる意見・発見・結論や提唱は著者によるものでNASAの見解を反映させるものではありません。
NASAの市民科学プロジェクトについてはこちらも参照してください。 science.nasa.gov/citizenscience