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恒星は宇宙の構成要素であり、恒星の特性を決定することは天体物理学の基礎です。変光星は、その時間変化する信号が恒星系の構造や力学を調べるカギとなるので、特に重要な対象です。変光星の研究の第一歩は、変光星を見つけてそのサンプルを分類することであり、これが本プロジェクトの目的でもあります。
畳み込み光度曲線で表した測光的な変化の形状で周期変光星を分類することは、変光星の種類を一つに決定する手法として常に決定的な方法であるかと言われればそうではありません。しかし、少なくとも可能性のある種類についてよい制限を与え、分光観測などのさらなる追観測に適した候補天体を洗い出すには有効な方法です。
SuperWASPは広視野惑星捜索(Wide Angle Search for Planets)のプロジェクトですが、その観測結果は恒星の変光を調べるための独自のデータセットにもなります。
SuperWASP恒星測光アーカイブは、重要な特徴を2つ持ちます。まず、それが 全天サーベイ であるため(ただし銀河面領域だけは除く)、明るい恒星 についてはバイアスのない均質なサンプルとなっています。2つ目は、その光度曲線が 高い頻度 で観測され(1夜に何回も)、そのうえで 長い観測期間 を持つ(何年にも及びます)という両方の利点を持つため、数時間から数年までのあらゆるタイムスケールで起こる変光を全て探すことができます。
SuperWASPデータで周期変光星を探す目的も2つあります。まず、よく似た種類の天体の 大規模なカタログ を作ることで、それらをまとめて研究することでその集団の特性を決定できます。2つ目は、珍しい振る舞いを示す 珍しい天体 を見つけることで、恒星の構造と進化に関する独自の知見を得ることです。
恒星の中には、恒星の外層部が規則的に膨張・収縮することで恒星の大きさと光度が変化して周期的な変光を起こすものがあります。脈動変光星と呼ばれるこうした恒星にはさらにいくつかの種類があります。恒星の脈動を測定することで、その星の質量や半径といったパラメータを決定できますが、その決定のための推論は恒星モデルに基づいているため、こうした星の大規模集団を調査してそのモデルの妥当性をテストする必要があります。脈動変光星の主な種類として、こと座RR型、たて座デルタ型、セファイド、みら型などがあります。ただし本プロジェクトのワークフローでは、脈動変光星を細分化して分類することは行いません。
こと座RR型星 は主系列を終えた巨星で、HR上で水平分枝と呼ばれる領域に存在します。このグループの星はどれも非常によく似た固有の光度を持っています。脈動周期は典型的には半日程度です。こと座RR型星はさらに複数のサブタイプに分けられ、RRab型は明るさが急上昇したのちにゆるやかに減光する特徴的な脈動特性を持ちますが、RRc型は非対称性が少ないです。こと座RR型星の多く(ただし具体的な割合は未知数)はブラツコ効果と呼ばれる、脈動の振幅や周期が数十日から数百日周期で変化する特徴を持ちます。
たて座デルタ型星 は主系列や早期準巨星に見られ、数時間周期の脈動が見られます。脈動の特徴は通常、急上昇と緩やかな減光を起こす鋸歯状を示します。
セファイド は数日から数か月周期で脈動する巨星・超巨星です。さらに みら型変光星 は漸近巨星分枝まで進化した、100日以上から数年かけて脈動する恒星です。他の脈動変光星同様、これらの種別でも急速に増光しゆっくりと減光する特徴があります。
この分類プロジェクトでは、畳み込み光度曲線だけでそれぞれのタイプを分類することは難しいので、すべての種類をまとめて単に 脈動変光星 として分類します。
食連星は、2つの恒星が共通する重心の周りを公転している連星系の一種です。連星系の軌道面が私たちの視線方向に沿っているとき、それぞれの恒星は公転軌道を1周するごとに、私たちの方向から見てもう1つの恒星の正面を通過し、それが両方の恒星で起こることで1周期につき2回の食が起こります。食連星は、恒星の半径と質量を力学的に決定できる唯一の系です。
もし2つの恒星が十分に離れていれば、食が起こっている時間(光度曲線の幅)は比較的短く、こうした分離した連星では食の範囲外ではほとんど・あるいは全く変光しません。こうした恒星はアルゴル型食連星、EA型星 と呼ばれます。主な食と2次食は一般にV字型をしており深さが異なることが多いです。この2種の食は軌道が円形であれば位相0.5ごとに起こりますが、かなりゆがんだ楕円軌道であれば周期はずれます。
一方で2つの恒星がより近く、ロッシュローブとして知られる等ポテンシャル面を満たす場合は恒星の形状が楕円形に歪みます。こうした半分離型の連星は歪んだ恒星を地球から見た際の断面積が常に変化するため、食の外でもゆるやかに明るさが変化します。主な食と2次食は一般的に深さが異なります。こうした恒星はこと座ベータ型食連星、EB型星 と呼ばれます。実際には、EA型星とEB型星は連続的に分布しており境界を区別することは難しいので、本プロジェクトでは皆さんには2つをまとめて EA/EB型星 として分類してもらいます。
以下は、Kang Young-Woon氏の論文(Journal of Astronomy and Space Sciences 第27巻2号 p75~80, 2010年6月15日)より引用したとても分かりやすい模式図で、分離型・半分離型の食連星の範囲を表しています。
さらに、2つの恒星の両方がロッシュローブを埋めるほど接近している場合は、この2星はもはや接触しているといえます。恒星間では物質が移動できるため測光的な表面温度は同じになります。さらに潮汐ロックにより軌道周期が自転に同期しています。主な食と2次食の深さは一般的に同じとなり、まったく同一になることもあります。そして軌道周期全体で連続的に変光が起こります。恒星の片方に黒点がある場合は極大の片方だけがより明るくなることがあり、オコンネル効果として知られています。恒星が近いため軌道形状は常に円形となり、2つの食は位相0.5分だけ離れて起こります。こうした恒星はおおぐま座W型食連星、EW型星 に分類されます。
以下はBotRejectsInc (http://cronodon.com/SpaceTech/AstroTech.html)による接触連星とその光度曲線についての模式図です。
食連星の食が起こる時刻を精密に測定すると、連星軌道が時間によってどう変化するかを測定できます。もし食の周期が少しずつ長くなっていけば、恒星はだんだん離れていることを意味し、逆に周期が減少していれば恒星は接近しており最終的には合体する可能性もあります。また、食の周期が周期的に増減を繰り返している場合は、それは連星系の光が伝達する時間の変化の効果による現象で、その連星系に3番目の恒星が存在することを示唆します(結果のタブを参照)。
単一の恒星の表面にとても目立った 黒点 があると回転変光星となることがあります。これは、恒星の自転によって見かけの明るさが変化し、連続的で正弦波状の変光を起こします。恒星の自転周期と黒点活動については関連性が指摘されていますがまだ理解が進んでおらず、この種の回転星のサンプルはこの現象を研究する上で重要です。
回転星の他の原因として、食を起こさない近接連星系が、距離が近すぎて互いの重力で恒星本体が引かれて、球体から楕円形に形が歪んでいる天体が知られています。こうした恒星が互いを公転すると、私たちの方向から見たときに、恒星の見えている部分の表面積が変化するため、楕円体状変光星 と呼ばれる変光が畳み込み光度曲線に現れます。これらの星も正弦波状の変光を起こします。
本分類プロジェクトでは、両方のタイプを区別せずに単にまとめて 回転星 として分類します。
多重周期星とは、光度曲線内に複数の一貫した変光がある天体です。この中には 多重階層恒星系 が含まれます。これは、たとえば1つの光点に見える恒星に、実際は2組の食連星系が互いの共通重心を公転しており、合計4つの恒星が含まれるような天体です。その場合、光度曲線には2種類の周期の食連星の特徴が現れます。私たちはこの市民科学プロジェクトを始める以前に、現在知られている唯一の二重の食連星を含む階層的な五重連星系をSuperWASPデータから発見したことがあります( 結果 を参照)。こうした階層的な複数星系は星形成や恒星進化の研究に役立ちます。
もう1つは、食連星系内の脈動変光星 で、光度曲線内に脈動の周期と食の周期の両方が見えます。こうした系は、恒星質量や半径を力学的に測定できるため、恒星の脈動モデルと比較するうえで重要な対象です。私たちはこの市民科学プロジェクトを始める以前に、半分離食を起こす食連星内に明るいたて座デルタ型星が含まれているのを発見しました( 結果 を参照)。この星は今まで知られていたどの系よりも大きな脈動の振幅を持っていました。現在100個ほどのたて座デルタ型星が食連星内にいることが分かっていますが、食連星内のこと座RR型星はまだ見つかっていません。