太陽以外の恒星の周囲を公転する小惑星のことを太陽系外小惑星(Exoasteroid)と呼びます。私たちと一緒に、太陽のような恒星の進化の最終段階である、白色矮星と呼ばれる惑星サイズの天体周囲にある太陽系外小惑星を捜索しましょう。
太陽のような星が寿命を迎えると、白色矮星になります。多くの白色矮星はダストの円盤に囲まれており、これは惑星系の残骸であると考えられています。これらの円盤には、小惑星や彗星などの、軌道を公転する天体が隠れている可能性があります(下の想像図を参照)。白色矮星周りのダスト円盤は惑星系の最終段階を研究する上での優れた実験室であり、惑星の形成や死についての独自の情報を提供します。
(Credit: NASA/HST)
この堪える小惑星プロジェクトでは、あなたには空のタイムラプス動画を使って、過去10年間で明るさが変化した白色矮星候補を見分けてもらいます。この明るさの変化は小惑星のような天体が砕けて大量のダストを放出した際に起こります。つまり、白色矮星が時間経過に連れて明るさを変えていれば、それはそこに太陽系外小惑星が公転しているかもしれない兆候となります。
みなさんに見てもらう動画はNASAの広視野赤外線探査衛星(WISE)の宇宙望遠鏡によるものです。白色矮星がダスト円盤を持つことは35年以上前から可視光観測で知られていました。しかしNASAのWISE宇宙望遠鏡が赤外線で全天を10年以上観測した結果、太陽系外小惑星による明るさの変化を探す新しいチャンスに恵まれました。私たちがみなさんにこれらのデータの解析をお願いしているのは、コンピューターではノイズと区別することに苦労するようなパターンでも人の目は識別してくれるという素晴らしい成果を果たしているからです。
WISEの画像からは数多くの明るさの変化する白色矮星が観測されています。今のところ太陽系外小惑星のアウトバーストによるものと考えられているのは1例だけですが、皆さんの助けにより赤外線で変光する白色矮星のサンプル数を増やすことができ、星の死や惑星系の将来についての手がかりを得ることができます。
小惑星や彗星といった小天体は主星の形成中に生じる熱と圧力の中を生き延びることができるので、主星の死後も生き残ると理論上予想され、観測されています。私たちはこのシナリオを私たちの太陽系で確かめようにも、数十億年先にタイムスリップすることはできないので、代わりに異なる年齢の白色矮星で何が起こっているかを観測して、時系列順に一連の出来事につなぎ合わせることができます。
いくつかの理論では、小惑星が地球に生命に必要な化学物質を運んだとされています。ですので、白色矮星周囲の太陽系外小惑星の発見によって、宇宙のほかの場所で生命が誕生する可能性という大きな謎に一石を投じることができます。
下の画像は、上部にハッブル宇宙望遠鏡が撮影した星周円盤を持つ白色矮星の画像、下部に天文学者が円盤の実際の3次元形状と考えている姿をコンピューターでレンダリングした画像です。この画像は白色矮星の周りの円盤の一般的形状を示しており、フリスビー状をしていることがわかります。
(クレジット: HST/NICMOS)
つまり、このプロジェクトに取り組めば、あなたは惑星系の進化や化学、さらには宇宙の生命の解明に貢献できるのです!
堪える小惑星の市民科学プロジェクトでは、あなたにはWISEの宇宙望遠鏡が撮影した疑似カラー画像をつなぎ合わせて作ったショート動画を見てもらいます。青色が波長3.4ミクロン、赤色が波長4.6ミクロンの光に対応しています。私たちが日常目にする可視光線と比べてざっと10倍近くの波長です、各小惑星のタイムラプス動画には通常、2010年初頭から2021年末までの10年以上の期間の画像を含みます。白色矮星はそれぞれの動画で中央に位置します。
みなさんには、画面中央の白色矮星の明るさが時間経過で変化しているかという質問に答えてもらいます。
明るさの変化の仕方は変光の原因によって異なりますが、ここでは1枚のフレームでの変化(短い期間の変化)も、複数フレームでの変化(長期間の変化)も探してください。以下は実際に明るさを変化させている白色矮星の例で、このような発見をさらに期待しています!
(クレジット: NASA/WISE)
コンピューターアルゴリズムによって明るさの変化する星にフラグ付けを行うことは可能です。しかし、実際に赤外線で変光する白色矮星は珍しく、つまり自動探索だと変光白色矮星と誤って分類される天体のほうが、本物よりも多くなります。
明るさの変化をコンピューターが誤認する理由としては画像のノイズやほかのデータのアーティファクトといった理由があります。明るい輝星はWISEデータ内にスパイク状に見え、回折スパイクと呼ばれます。明るい輝星はWISE望遠鏡内で散乱しぼやけた光の塊を生み、ゴーストと呼ばれるドーナツ状のアーティファクトを生みます。ゴーストや回折スパイクといったアーティファクトは前後に飛び跳ねたり回転することがあり、膨大な数の星の明るさの測定データを汚染します。こうした測定の問題によりコンピューターソフトウェアの有用性は制限されますが、あなた自身の目と脳があれば、多くのノイズやアーティファクトの中から真の白色矮星の明るさの変化を認識することができます。
以下はWISE望遠鏡画像中の画像中央を走る回折スパイクの例(上段)とオレンジ色の強いゴーストの例(下段)です。
(クレジット: NASA/WISE)
このセクションは堪える小惑星プロジェクトの背後にある追加の科学的な詳細について興味のある方向けですので、このおまけの情報を読んでいなくても参加するうえで全く問題ありません。
近年、Gaia宇宙望遠鏡の全天データによって天の川銀河内の白色矮星と思われる天体の数が劇的に増加しました。Gaiaは100万個以上もの白色矮星候補の一覧を提供しています!どの白色矮星を本プロジェクトで用いるかは、Gaiaの距離測定の結果を参考に決めます。距離によって、太陽近傍のとても暗い白色矮星と、遠方の明るい主系列星を区別できるからです。 下の画像の、左側がWISE宇宙望遠鏡の、右側がGaia宇宙望遠鏡のイメージ図です。
(WISEのクレジット: NASAジェット推進研究所(JPL))
(Gaiaのクレジット: ヨーロッパ宇宙機関(ESA))
NASAの主要赤外線観測望遠鏡であるWISEとスピッツァーは、白色矮星を繰り返し撮像し明るさを記録してきました。これらのデータから、ダストの多い白色矮星は6か月から10年という長いタイムスケールで明るさが変化することが分かりました。下の図はダストの多い白色矮星のスペクトル(波長別の光の放射強度)です。Gaiaは白色矮星本体からの可視光、1ミクロン以下の波長を検出し、赤外線望遠鏡であるWISEとスピッツァーは周囲のダスト円盤からの波長数ミクロンから10ミクロンまでの放射を検出しています。
興味深いことに、最近打ち上げられたJWSTはこの同じ赤外線波長範囲の観測に長けており、いつかあなたの見つけた一番変光する白色矮星がJWSTによって観測されるかもしれません!
(クレジット: NASA/JPL-Caltech/J. Farihi)
さらなるダストの多い白色矮星の科学についての背景情報は、「もっと知りたい」「よくある質問」のセクションをチェックしてください。
この仕事について市民科学シード資金プログラムの助成金80NSSC23K1528を通じて支援してくださったNASAに感謝します。
堪える小惑星のスタッフの研究は国立科学財団との協力協定のもと、天文学研究大学協会(AURA)が管理するNOIRLabの支援を受けています。
本プロジェクトはWiseView画像切り抜きツール(Caselden et al. 2018)を使用しています。
本プロジェクトのロゴはCanvaを用いてデザインされました。