研究


銀河の渦巻腕のトレースが正しくクラスタリングされているかを教えてください!


本プロジェクトの目標は、以前Zooniverseプラットフォームでこの研究チームが行っていたSpiral Graphプロジェクトのボランティアによって集められた渦巻銀河の腕の個々のトレースを、個々の腕に整理することです。私たちのアルゴリズム[1]は自動でそれぞれのトレースをグループ化(クラスタリング)しますが、いつも上手く動作するとは限りません。私たちは、皆さんがアルゴリズムが正しい結果を提供しているかを判断することを必要としています。

皆さんの分類は私たちが開発しているAIの訓練にも使用されます。このAIはトレースを個々の腕にクラスタリングするのに適切なパラメーターを選択するもので、皆さんの貢献があればこのAIをより効果的なものにできます!

アルゴリズムとAIは何が違うのでしょう?

アルゴリズムは問題解決のために固定された一連のルール、段階を使います。固定されたロジックに従い、学習することはなく、同じ入力に対しては一貫性のある予測可能な結果を出力します。
一方でAIは人間の知能をシミュレートしたものです。問題解決へのアプローチを修正し、データが加わると自動で学習・改善ができ、様々な結果の可能性に応じてその出力は変化します。


なぜ銀河の個々の渦巻腕を特定することが重要なのでしょうか?

(もし銀河について馴染みが無ければ、もっと知りたいページで紹介している短い学習モジュールを見てください。特にモジュール2は様々な銀河の種類やその特徴について解説しています。)

渦巻銀河はいつも左右対称形ではなく、個々の腕同士でも形状が異なることがあります。
以下に3つの渦巻銀河の例を示します。これらは一見対称的に見えて、よく見ると腕の形はそれぞれ微妙に異なっています。ある腕はより長く、ある腕は途中で分岐しており、またある腕は異なるピッチ角 (渦巻の巻き付き具合のきつさを示す指標、よくある質問参照)を持ちます。

NGC 1300
M 101
PGC 1212361

私たちが使っているピッチ角測定ソフトウェア P2DFFT[2]では、入力された画像の銀河は完全に対称形であると仮定して測定します。つまり渦巻銀河の全体画像をこのソフトウェアに読み込ませると、個々の腕の対数螺旋の長さとピッチ角が等しく、それぞれの腕の開始位置が銀河の周囲に均等に配置されていると仮定して測定します。ピッチ角の測定を、すべての腕について同時ではなく個々の腕について別々に行っているため、この対称形であるという仮定をおいても問題なく測定できるのです。


どうやったら手助けできますか?

私たちは皆さんに、クラスタリングアルゴリズムは正しく銀河の腕のトレースを個々の腕にグループ化できているか判別していただきたいと思います。

タスク内容

1. まず、私たちは皆さんに以下のような3種類の図のセットを提示します。

  • (A) 一番左の図は、隣にあるカラー画像と灰色の画像を重ね合わせた画像です。灰色の画像はSpiral Graphに参加した複数のボランティアが銀河の腕をなぞった個々のトレースを集めたものです。カラー画像は私たちのアルゴリズムが、灰色のトレース群を個々の腕にグループ化した結果です。外れ値データは無視しています。それぞれの色がそれぞれの腕(トレースのグループ)に対応しています。
  • (B) 真ん中の図は、アルゴリズムがクラスタリングを行った結果であるカラー画像のみを表示しています。前述のようにそれぞれの色がそれぞれのトレースグループを示しています。
  • (C) 一番右の図はSpiral Graph参加ボランティアによるトレースを集めた灰色画像のみを示しています。
(A) 重ね合わせ画像
(B) クラスター画像
(C) 集約されたトレース群画像

2. 次に、トレースが個々の腕に正しくクラスタリングできているか尋ねられていると思いますので、それにシンプルに はい か いいえ を選んで答えてください!


影響

皆さんによる判断結果を用いて、私たちが開発している新しいAIを訓練します。このAIは、1つにまとめられたトレース画像からクラスタリングアルゴリズムが用いるべき最適な設定値を選択できます。適切に設定されたクラスタリングアルゴリズムは、トレースを個々の腕にグループ化する作業をより正確に行うことができ、それぞれの腕のピッチ角の測定も正確にできるようになります。これによって、非対称形な銀河の全体のピッチ角をより正確に決定できるようになると考えています。

なぜピッチ角の測定が重要ですか?

渦巻銀河の腕のピッチ角は、その銀河のより測定が困難で時間のかかるパラメーターに関係があります。これらのパラメーターには、銀河核で見つかるブラックホールの質量[3]、バルジの恒星質量[4]、銀河全体の恒星質量[5]、最大回転速度、銀河中の暗黒物質の存在量[6]などがあります。渦巻銀河の腕のピッチ角を測定することでこうしたパラメーターを手早く簡単に推定でき、より詳細な追跡観測を行うべき興味深い銀河を見つけることができます。

たとえば私たちはピッチ角を巨大銀河の中心にある珍しいブラックホールの捜索に用いています。こうした珍しいブラックホールは質量が太陽の数百倍から数千倍の間という中途半端な値で、中間質量ブラックホールと呼ばれています。ほとんど全ての巨大な銀河の中央には超大質量ブラックホールと呼ばれる太陽の数百万倍から数十億倍もの質量のブラックホールがあります。中間質量ブラックホールを有する銀河を最初に発見することで、私たちの天の川銀河のような渦巻銀河がどのように進化してきたかをより深く知ることができます。


本プロジェクトはNASA市民科学シード予算プログラムの支援を受けています[7]。



  1. https://alptezbasaran.github.io/ncam25/#/3 で私たちのクラスタリングアルゴリズムの概要であるフローチャートを紹介しています。 ↩︎

  2. P2DFFT は渦巻銀河の画像に二次元高速フーリエ変換を適用して、それぞれの腕を分離してピッチ角を測定する並列化コードです。コードの最新バージョンは https://doi.org/10.5281/zenodo.3165700で入手できます。 ↩︎

  3. Davis et al. 2017, MNRAS, 471, 2187参照 ↩︎

  4. Davis et al. 2019, ApJ, 873, 85参照 ↩︎

  5. Davis et al. 2019, ApJ, 869, 113参照 ↩︎

  6. Davis et al. 2019, ApJ, 877, 64参照 ↩︎

  7. Treuthardt, P., Tezbasaran, A., & Hewitt, I. (2024). Spiral Graph: Cluster Buster - A Participatory Science Project to Improve the Identification of Spiral Arms from All-Sky Survey Galaxy Images. Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.15882378 ↩︎